2011-03-01から1ヶ月間の記事一覧

『ヴィクトリア朝の昆虫学』(ジョン・F・M・クラーク著、東洋書林)を読む。 昆虫採集といえば、道楽だと思われることが多い。だから昆虫を学問の対象とするというと、趣味の学問と受け取られがちだ。その始まりは博物学全盛だったヨーロッパで外国の珍奇な…

原乳は厩舎の溝に流れ落ち雌牛の漏らす鳴き声悲し蕾らは春の力をうちに秘め衣解く日をひたすらに待つ目に見えぬ放射線は空に満つ廃炉も近き発電所かなオーボエの音色悲しき春の雨被爆報じる紙面を濡らす狼の影に怖れて畜群は滅びの崖へと突き進むのか気まぐ…

『科学は不確かだ!』(R.P.ファインマン著、岩波現代文庫)を読む。 1963年4月にワシントン州立大学で行われた著者の三夜連続の講演録で、I.科学の不確かさ、II.価値の不確かさ、III.この非科学的時代からなる。いずれも科学に対して一見否定的な題名がつい…

『日本語の深層』(木村紀子著、平凡社新書)を読む。 太古の日本語に息づいていたその当時の人々の感性を探るエッセイ。各章は独立しているので、どこからでも読める。私が面白いと感じたのは第六章の「ねる(練る)」ということばの深層にある「ゆっくりと…

涼しげなよそ行き顔の君の鼻闇に紛れてあま噛み狙うくちづけのシニフィエ探し暗闇の中で貪る君のくちびる袖口のコロンの香りが恋を生む暗号みたいに私を誘う時来れば桜のように美しく命はめぐる愛あるかぎり

蓴生ふ池一面の命かなそばにいる私は君のそばにいる離れていても闇の中でも冷めやらぬガイアの怒りを吐くがごと余震は続く東の彼方見上げれば夜空に月の光満ち大地の傷を癒さんとす募金する子らが手にする銅貨には人が忘れた温もりがある瞼閉じ月光浴びて佇…

差し伸べる手があればこそ明日もまた立って歩める光求めてそれぞれの責務を果たし夜来れば静かに祈ろう明日を信じて静まりし春の波濤と向きあいていかなる歌を詠むべきなりや

困らせた君の空見る表情に甘えたくなる川縁の路危機の時こそ我を捨ててあしたへと生きる力を守っていこう愚かでも明日を信じる人間は世界に花を咲かす術もつ For a successful technology, reality must take precedence over public relations, for Nature …

『不可能、不確定、不完全』(J.D.スタイン、早川書房)を読む。 ある問題が解決できないこと、ある疑問に対して答えられないこととはどういうことかについて数学者の立場から例をあげながら述べていく本。ある問題が解決できない場合、一つにはそれが特定の…

東北地方の大地震から一日後。昨日は甚大な被害状況をただテレビで見つめていた。

忙しい朝ふと君の顔浮かぶG線上のアリアを聴くと

君を追い不毛の沙漠を渡るため渇きを癒す愛をください君といる範囲の中で恋実る実数解はあるのでしょうかわが恋の連続線は君が引く緋の接線とどこで出会うの今までの恋は遊びか真剣か自分に問いつつ春空を見る乳清を子豚は啜り小屋で啼くああ愛しそのいたい…

東風青き空の裳裾を揺らしけり

錯覚の科学』(C.チャブリス、D.シモンズ著、文藝春秋)を読む。 日常よく経験する思い違いや見間違いなど、罪のないものなら笑って済ませられるが、これが裁判や航空機の操縦、病気の診断だったらどうだろう。専門家の判断や熟練者による判断や直観的判断を…

『江戸の思想史』(田尻祐一郎著,中公新書)を読む。 江戸という時間と空間の中でどのような思想が展開されてきたのかを、著明な思想家の要点を紹介していく本。通読して感じたのは思想がそのときどきの世界情勢に影響されつつ変遷していくということである…

主のなき巣箱や空に雲一つ噂する恋がなくてもこの季節くしゃみくしゃみの花粉のいたずら放課後の音楽室でピアノ弾く指に異性をあの日感じた 世の中には噛みついても歯形もつかないような本もある。でもそんな本を噛み続けることが大切だと思っている。啜り込…

雛壇の澄まし顔なる二人からエールをもらう三月三日また会えた雛人形にこっそりと一年間の恋報告す雛祭り祝う仲間は三人の官女となるか恋を語りて雪洞の灯りは雛の横顔を浮き立たせつつ闇に浸み入る管楽の音なき五人の囃子聴き夜の祭りは静かに進む雛段を母…

会いたいの四文字だけを送信し君の答えを待つことにする雨の日の猫は眠りを貪りて恋の悩みを聞く耳持たず苦しさはいずれも同じことだから水にも恋にも溺れるという三月の光は行きつ戻りつでうららかまでは遠き道のり小雨降る弥生の闇はまだ深く木の芽は固く…