『江戸の思想史』(田尻祐一郎著,中公新書)を読む。
 江戸という時間と空間の中でどのような思想が展開されてきたのかを、著明な思想家の要点を紹介していく本。通読して感じたのは思想がそのときどきの世界情勢に影響されつつ変遷していくということである。個人の思想はその個人だけによって生まれるものではなく、あくまで生きていた時空の産物なのだと感じた。これらの思想が生まれるにあたって、江戸時代という歴史上稀に見る長期間の政治体制はどのような影響を及ぼしたのだろう。江戸から明治にかけて時代は大きく変わったが、その際日本の思想の流れはどう変わったのだろう。江戸後期から明治にかけての変遷について著者の意見を聞きたいと感じた。また徹底的に宗教活動を管理した江戸時代において宗教と信仰とはどのような影響を日本人の思想に与えたのだろう。第12章の「公論の形成」第13章の「民衆宗教の世界」ではそれらの点について触れられているので、これに続く時代の思想史を読んでみたいと感じた。

江戸の思想史―人物・方法・連環 (中公新書)

江戸の思想史―人物・方法・連環 (中公新書)


さわやかなこの週末に何をせむ春のコオトを空に合はせて

未来からわたる風にはやがて咲く桜の色が溶かされている

桜待つ心は忍ぶ恋に似てただひたすらに逢瀬夢見る

手帳にはデートの日時と君を詠む歌を記して仕事に励む

梅に来る目白は歌う軽やかに春の訪れ言祝ぐがごと

花を待ちこがれるものが囁いて今宵も吾を宴へ誘う


子ども向けのすぐれた作品というのは、童話でもアニメでも、世界をわかりやすい形でしめすことではなく、世界には計り知れないことがあることをわかりやすく示す作品ではないだろうか。