2012-06-01から1ヶ月間の記事一覧

『小川洋子の偏愛短篇箱』(小川洋子編著、河出文庫)を読む。 作家の小川洋子さんによる短篇アンソロジーで、2009年同社より発刊された単行本を文庫化したもの。不気味な味の短篇から細かい人間模様を描写した名品までさまざまな短篇が「箱」に収められてい…

『マイクロワールド』(マイクル・クライトン著、早川書房)を読む。 早逝が惜しまれた作家の遺稿をノンフィクション作家リチャード・プレストンが完成させたSF作品を堪能した。かつて『ジュラシック・パーク』では、巨大な恐竜に恐怖した読者は、今回自然界…

『貧乏人の経済学』(A.V.バナジー&E.デュフロ著、みすず書房)を読む。 貧困層はなぜ貧困から抜け出せないのか、援助は有効なのかむしろ自立を阻害するので有害なのか、経済的援助を行う場合に常に問題となる議論を、大所高所の概念論ではなく自らが集めた…

『猫を抱いて象と泳ぐ』(小川洋子著、文春文庫)を読む。 生まれつき上唇と下唇がくっついているという奇形を持って生まれた無口な少年がふとしたことからマスターとよばれる男からチェスの手ほどきを受け、やがてリトル・アリョーヒンと呼ばれるようになる…

『完本 酔郷譚』(倉橋由美子著、河出文庫)を読む。 7年前の6月に亡くなった作家の『よもつひらさか往還』(2002年)と『酔郷譚』(2008年)を併せて文庫化した本。主人公の慧君は祖父が元首相の入江晃で、その祖父が「前世紀の、多分まだ昭和だた頃に始め…

『遺伝子と性行動』(山元大輔著、裳華房)を読む。 脳神経系の構造と機能の基本デザインは遺伝子で規定されており、行動を引き起こすものが神経系であるのなら、生物の行動の基本パターンは遺伝子によって規定されているはずだ。本書はショウジョウバエにお…