2012-01-01から1ヶ月間の記事一覧

『ラピスラズリ』(山尾悠子著、ちくま文庫)を読む。 画廊で目にした三枚組の銅版画から物語は始まる。一枚目は、晩秋の木立で荷車に積み上げられた十数人の男女の死体を落ち葉の吹きだまりに投げ捨てる版画。二枚目は真冬の寝室の様子を描いた版画。三枚目…

『快感回路』(D.J.リンデン著、河出書房新社)を読む。 一般に報酬系と呼ばれる脳内システムについて、最新の知見を紹介しながら解説してくれる本。冒頭でこの回路の基本的解剖が解説される。腹側被蓋野(VTA)ニューロンが側坐核をはじめ、扁桃体、前帯状皮…

『障害者の経済学』(中島隆信著、東洋経済新報社)を読む。 2006年に出版された同名の本の増補改訂版で、経済学の視点からみて障害者支援の制度設計はどうあるべきかを論じた本。著者は障害者問題が日本では一般の議論にのぼることが少なく、経済学者も避け…

『移行化石の発見』(B.スウィーテク著、文藝春秋)を読む。 ダーウィンが唱えた進化論を実証するために、生物種と生物種の間を埋める移行化石(ミッシングリンク)は何を語るのか。それは下等な生物から高等な生物へとつながる一本の連鎖の一つを埋めるもの…

『大気を変える錬金術』(T.ヘイガー著、みすず書房)を読む。 「水と空気と石炭からパンを作る方法」といわれたアンモニア合成法(ハーバー・ボッシュ法)を開発した二人の化学者フリッツ・ハーバーとカール・ボッシュの人生を描きながら、当時の社会情勢が…

『スパイス、爆薬、医薬品』(P.ルクーター/J.バーレサン、中央公論新社)を読む。 人類の歴史に関わった様々な化学物質のエピソードをブリティッシュコロンビア州キャビラノ大学化学科教授が解説してくれる本。その中には塩化ナトリウムから香辛料に含まれ…

『師弟のまじわり』(ジョージ・スタイナー著、岩波書店)を読む。 人類の歴史で人は自分の知識や技術を人に伝授してきた。教え、教わるというは生きていく(生き残る)上で必須であるし、これからも何らかのかたちで続いていく営みだろう。そうした師弟の関…

『オリクスとクレイク』(マーガレット・アトウッド著、早川書房)を読む。 『侍女の物語』、『昏き目の暗殺者』の著者によるディストピア小説。物語は人類が生み出したJUVEウイルスにより人間がことごとく死亡した世界に残されたスノーマンことジミーによっ…

『コラテラル・ダメージ』(ジグムント・バウマン著、青土社)を読む。 『リキッド・モダニティ』、『近代とホロコースト』などの著書で知られる社会学者バウマンが2010年から2011年にかけて行った講演を元にして書いた文章を集めた本。著者は液状化というキ…

『猟奇博物館へようこそ』(加賀野秀一著、白水社)を読む。 タイトルからするとエロとグロを主題にした読み物かのように誤解される向きもあるかもしれないが、内容は人体内部を眼差そうという欲望がどのように具象化されてきたかを主に西欧の博物館を巡りな…

『ツナミの小形而上学』(ジャン-ピエール・デュピイ著、岩波書店)を読む。 人類を襲うカタストロフについての哲学的考察をまとめた小著。震災が起こった年のうちに読んおこうと思いつつ、年末になりやっと読むことができたが、やっぱり読めてよかったと思…