2015-01-01から1年間の記事一覧

『人はみな妄想する』(松本卓也著、青土社)を読む。 神経症と精神病の鑑別診断という点に焦点をあてて、ラカンの思考の変遷を丁寧にたどる内容でした。この二つの疾患を鑑別するという臨床上重要かつ実践的な視点がラカンと著者で共有されているため、ラカ…

『気候変動を理学する』(多田隆治著、みすず書房)を読む。 同社から刊行されている『植物が出現し、気候を変えた』を読んで、地質時代の気候変動のことを知ろうと思って読みました。著者の専門は、古気候学、古海洋学で最近はタクラマカン砂漠の黄砂の研究…

『植物が出現し、気候を変えた』(D・ビアリング著、みすず書房)を読む。 著者はシェフィールド大学の動植物学部門の教授で、専門は植物学と古気候学ということで、話題はカンブリア紀から始まり、新生代に至るまでの植物の進化と気候を含めた地球環境の変…

『反知性主義』(森本あんり著、新潮選書)を読む。 『アメリカの反知性主義』(リチャード・ホッフスタッター著、みすず書房)が名著であることは夙に知っていましたが、手つかずのままでいたところ、この本を書店でみて読んでみました。本書の冒頭にもある…

『暴力の人類史』上・下(スティーブン・ピンカー著、青土社を読む。 上巻580ページ、下巻652ページという大部な書籍で、邦題のとおり太古から現代までの暴力についての歴史を取り扱った本ですが、原題は『The better angles of our nature』とあるように、…

『氷』(アンナ・カヴァン著、ちくま文庫)を読む。 序文に紹介されていますが、本作はスリップストリーム文学というカテゴリーに分類されるそうで、”予想を超えた事態や偶然の出来事の連鎖のうちで語られるストーリーは、実質的にプロットを欠いて”いると書…

『モラルの起源』(クリストファー・ボーム著、白揚社)を読む。 ヒトの道徳観がどのように進化してきたのかを考察する本を昨年末から読みました。著者は文化人類学が専門で、ヒトの利他性がどのように進化したのかについて独自の仮説を提唱しています。血縁…

『破壊する創造者』(フランク・ライアン著、早川書房)を読む。 原題は『Virolution』で、ウイルスと進化を合わせた造語になっているように、ウイルスが生物の進化に大きく寄与していることが中心に取り上げられています。著者は医師でもあるのですが、ウイ…