『植物が出現し、気候を変えた』(D・ビアリング著、みすず書房)を読む。
著者はシェフィールド大学の動植物学部門の教授で、専門は植物学と古気候学ということで、話題はカンブリア紀から始まり、新生代に至るまでの植物の進化と気候を含めた地球環境の変化の話です。動物、特に恐竜を中心とした本はよく目にしますが、植物が主人公ということで手に取りました。オリバー・サックスさんも今年のノンフィクションのベストワンと推薦してましたし。
なるほど読んでみると非常に面白い話題が満載でした。化石になった植物を科学するのに、進化生物学や古気候学といった分野の知見が加わることで豊富な情報が新たに得られるということにまず感動します。物言わぬ化石がこれほどまでに饒舌になるとはという感想です。 第1章では、植物が二酸化炭素を大気中から除くことで地球の気候を変化のさせ、それがひいては葉の形態に変化を与えたということが紹介され、第2章では酸素濃度の変化と生物の影響が取り上げられます。第3章はオゾンと地球環境の話です。過去にもオゾン層が破壊されたかも知れないという興味深い話題に加え冒頭のケンブリッジ大学の試験のエピソードが秀逸です。第4章になると地球温暖化と恐竜の出現の話になり、第5章は南極はかつて温暖だったという話です。かつてあった極地の森に関する通説が覆される話も痛快です。 第6章はでは温室効果ガスが取り上げられ、二酸化炭素以外のガスの役割をもっと考える必要があることが語られます。第7章は、光合成の話で、植物が二酸化炭素から作る分子によって分類されるC3植物とC4植物の話で後者が繁栄した理由が考察されます。第8章は全体を 通しての総括です。著者の業績を含め均等に目配りをきかせた記述で、随所に紹介される科学者たちのエピソードも面白く読めました。なるほど科学のノンフィクションとして推薦できる一冊です。

植物が出現し、気候を変えた

植物が出現し、気候を変えた