『気候変動を理学する』(多田隆治著、みすず書房)を読む。
同社から刊行されている『植物が出現し、気候を変えた』を読んで、地質時代の気候変動のことを知ろうと思って読みました。著者の専門は、古気候学、古海洋学で最近はタクラマカン砂漠の黄砂の研究に従事されており、本書はサイエンスカフェで一般の方を対象として行われた講義がもとになっています。最初に地球表面の温度が何によって規定されるかの話から始まり、過去の地球の気候変動を講義していきます。対話形式(聴講者のレベルも高いです)なので読みやすく構成されていますが、レベルは決して低くしてはいないので、この分野に馴染みがない私には少しとっつきにくいところもありました。全球凍結の話題も取り上げられ、地球の二酸化炭素濃度がどのように変動したのか、そしてそれがどのような事実に基づいて推測されるのかが説明されます。炭素の循環について、生物ポンプ、アルカリポンプ、炭酸塩ポンプというものがあり、このポンプの駆動力は地球の深層水循環の変化が関係しているらしいという話があります。地球温暖化の議論がさかんですが、変動をどの地域のどれくらいの期間について議論するのかが大切だということがわかります。映画『デイ・アフター・トゥモロー』のどの程度までがほんとうらしいかという話もそれまでの講義をまとめる形で取り上げられており、聴講者(読者)を飽きさせない工夫がされています。最後は太陽活動と気候変動の話で終わります。地球温暖化など、巷に賛否が分かれている議論がでは手間はかかるけれど、基礎的知識をしっかり理解することが重要であることを教えてくれます。解説は分かりやすいのにこしたことはありませんが、物事を単純化しすぎる議論には注意が必要だということも著者の講義の姿勢から伺えます。ソフトカバーで手に取り易い本ですが、内容はとてもしっかりしていて、説明と図を何度も往復しながら読みました。

気候変動を理学する―― 古気候学が変える地球環境観

気候変動を理学する―― 古気候学が変える地球環境観