2011-05-01から1ヶ月間の記事一覧

紅を引くなまめかしさは雨のせい鏡の奥の静けさやよし 肌寒き雨の五月の週末の人恋しさを紅茶に溶かす飲み残す茶の澱ほどの思い出も残らぬものか時過ぎ去れば手に残る碗のぬくもりは雨の夜あなたがくれたやさしさに似る 褐色の湯に踊る茶葉眺めつつ昇天堕落…

『敗北を抱きしめて 上』(ジョン・ダワー著、岩波書店)を読む。 日本は未曾有の震災に見舞われ、「戦後」ならぬ「災後」という言葉も出てきた。ならば時代が一変した「戦後」の姿はどうだったのかをもう一度知りたくて手に取ったのがこの本。著者は努めて「…

『不安定からの発想』(佐貫亦男著、講談社学術文庫)を読む。 面白そうな題名だと思って手に取った本だが、内容は飛行機の設計思想に関わるもの。前半は世界で初めて友人動力飛行機の飛行に成功したライト兄弟を巡る話。彼らがどうして成功したかについての…

幼き日海辺で語った冒険の帆は今いずこ日暮れは近しパンプスは脱いで明日へと翔びたとう飾りなき身で空どこまでも涙ふき束ねた髪を解きつつ万緑の野に身を染めていく涅槃へと至る眠りに肉体は色溶け空の骸となりぬ 戴冠の妃を真似し花の宴愛する王の口づけを…

失った文庫のように片隅で蘇り待つ記憶のページ永久(とわ)誓う愛の言葉の原石はやがて輝く宝石となる密やかに獲物を狙い夜を待つわれらはともに爪持つ族(うから)風に舞い命を運ぶ種子たちよ愛の言葉も彼へ届けて 『「余剰次元」と逆二乗則の破れ』(村田…

『女の老い・男の老い』(田中冨久子著、NHKブックス)を読む。 副題に「性差医学の視点から探る」とあるように、医学的な性差、主に性ホルモンの男女差からみた老化現象について解説した本。医学的問題としては、更年期に始まり、認知症、虚血性心臓病、骨…

『日本語の語源』(阪倉篤義著、平凡社ライブラリー)を読む。 著者は大正六年生まれで平成六年に亡くなられている国語学者で語構成論という分野を切り開いた学者と解説にある。その著者による語源論ということで、まず語源をどう考えるかという点から論は始…

『乾燥標本収蔵1号室』(R.フォーティ著、NHK出版)を読む。 『生命40億年全史』、『地球46億年全史』の著者のフォーティ先生が大英自然史博物館の裏の裏まで案内してくれる一冊。冒頭に著者曰く、「人生は記憶という名の館長が管理するコレクションで成り…

『絶叫委員会』(穂村弘著、筑摩書房)を読む。 言葉にはそれを使う人のそれぞれの記憶があり、世界がある。その世界がそれぞれ一致している保証はもとよりない。私たちは自分の言葉の世界が相手と同じものだと疑うことなく、日々言葉を使って暮らしているが…

『選択の科学』(S.アイエンガー著、文藝春秋)を読む。 人生において選択しないという選択はない。選択という行為について心理学、生物学、文化人類学的考察に基づきながら考察した本。著者は商品選択に関わる実験(第6講で紹介されているジャムの選択肢が…