『移行化石の発見』(B.スウィーテク著、文藝春秋)を読む。
ダーウィンが唱えた進化論を実証するために、生物種と生物種の間を埋める移行化石(ミッシングリンク)は何を語るのか。それは下等な生物から高等な生物へとつながる一本の連鎖の一つを埋めるものではなく、自然選択によって枝分かれしていく生物の樹形図を見えるようにしてくれる。この石に刻まれた語りを私たちはどう解釈してきたのか、冒頭の二章でその歴史を振り返り、第三章では魚類から両生類への進化、第四章では鳥類と恐竜の関係、第五章では私たちほ乳類の祖先の由来、第六章では陸棲動物から鯨への進化、第七章では象の進化、第八章では馬の進化、そして第九章では人類の進化について、それぞれ重要な化石の発見とその意味が語られる。移行化石の発見で何がわかってきたのか、そしてまだどういうことが論争されているのかが手際よく整理されている。最後では進化は偶然に支配されているということを強調しており、断続平衡説も紹介しつつ、全体として亡きグールドに親和的な著述となっている。合わせて読むと面白い類書として、人類の進化については、『ヒトの進化七〇〇万年史』(ちくま新書)、恐竜から鳥への進化については『恐竜はなぜ鳥に進化したのか』(文春文庫)、魚類からほ乳類への進化については『ヒトのなかの魚、魚のなかのヒト』(早川書房)がある。

移行化石の発見

移行化石の発見