『マイクロワールド』(マイクル・クライトン著、早川書房)を読む。
早逝が惜しまれた作家の遺稿をノンフィクション作家リチャード・プレストンが完成させたSF作品を堪能した。かつて『ジュラシック・パーク』では、巨大な恐竜に恐怖した読者は、今回自然界に普通にみる鳥やコウモリ、クモや狩ハチの中を主人公たちと一緒に逃げ惑うスリルを味わう。『ジュラシック・パーク』では南海の孤島であった舞台は、今回ハワイのオアフ島となり、遺伝子関連企業はIngen社からNanigen社となるところは、やや二番煎じ的な感じがするが、主人公は7人の侍ならぬ生物学の知識をもった7人の大学院生である。彼らはふとした偶然からNanigen社の陰謀で、同社が発明したテンソル・ジェネレーターにより一寸法師なみに縮小化され、次から次に迫る”巨大生物”の危機に立ち向かっていくことになる。そこで披露される生物のさまざまな知識に触れるのも面白いが、物語が展開するにつて加速度的に高まるスリルとサスペンスで一気に最後まで読ませる著者の力量は相変わらずである。
しかし人間が縮小化されたときの生物物理的な制約はどうしても気になる。この点はつっこみどころはあるのだろうが、私と同様に気になる向きには、『ゾウの時間 ネズミの時間』(中公新書)、『スケーリング:動物設計論』(コロナ社)、『生物の大きさとかたち』(東京化学同人)などを読むとさらに楽しめるかも知れない。

マイクロワールド (上) (ハヤカワ・ノヴェルズ)

マイクロワールド (上) (ハヤカワ・ノヴェルズ)

マイクロワールド (下) (ハヤカワ・ノヴェルズ)

マイクロワールド (下) (ハヤカワ・ノヴェルズ)