俳句

わが胸に潮満ちゆきて眠る夜母に抱かれし海を求める花と咲けわが恋心行く末は乱れ散るとも悔やむことなし添い歩く足軽やかにしてくれる春色の靴一人で磨く朝ぼらけ春外套に包まれて一人さまよう桜迷宮七分咲き八分九分へと開きゆく桜は時の流れを語る 春嶺の…

原乳は厩舎の溝に流れ落ち雌牛の漏らす鳴き声悲し蕾らは春の力をうちに秘め衣解く日をひたすらに待つ目に見えぬ放射線は空に満つ廃炉も近き発電所かなオーボエの音色悲しき春の雨被爆報じる紙面を濡らす狼の影に怖れて畜群は滅びの崖へと突き進むのか気まぐ…

蓴生ふ池一面の命かなそばにいる私は君のそばにいる離れていても闇の中でも冷めやらぬガイアの怒りを吐くがごと余震は続く東の彼方見上げれば夜空に月の光満ち大地の傷を癒さんとす募金する子らが手にする銅貨には人が忘れた温もりがある瞼閉じ月光浴びて佇…

君を追い不毛の沙漠を渡るため渇きを癒す愛をください君といる範囲の中で恋実る実数解はあるのでしょうかわが恋の連続線は君が引く緋の接線とどこで出会うの今までの恋は遊びか真剣か自分に問いつつ春空を見る乳清を子豚は啜り小屋で啼くああ愛しそのいたい…

東風青き空の裳裾を揺らしけり

主のなき巣箱や空に雲一つ噂する恋がなくてもこの季節くしゃみくしゃみの花粉のいたずら放課後の音楽室でピアノ弾く指に異性をあの日感じた 世の中には噛みついても歯形もつかないような本もある。でもそんな本を噛み続けることが大切だと思っている。啜り込…

雛壇の澄まし顔なる二人からエールをもらう三月三日また会えた雛人形にこっそりと一年間の恋報告す雛祭り祝う仲間は三人の官女となるか恋を語りて雪洞の灯りは雛の横顔を浮き立たせつつ闇に浸み入る管楽の音なき五人の囃子聴き夜の祭りは静かに進む雛段を母…

会いたいの四文字だけを送信し君の答えを待つことにする雨の日の猫は眠りを貪りて恋の悩みを聞く耳持たず苦しさはいずれも同じことだから水にも恋にも溺れるという三月の光は行きつ戻りつでうららかまでは遠き道のり小雨降る弥生の闇はまだ深く木の芽は固く…

雨だれはやさしく傘を伝わって恵みの意味を手へと伝える雨粒に映える森羅万象に恋の行方も書かれているのかまだ暗き空より注ぐ雨粒にモナドの影と響きとをみる雨を聴くその透明な旋律に広がる宙(そら)のランドスケープ真鍮の杯に葡萄酒満たされて終わり迎…