原乳は厩舎の溝に流れ落ち雌牛の漏らす鳴き声悲し

蕾らは春の力をうちに秘め衣解く日をひたすらに待つ

目に見えぬ放射線は空に満つ廃炉も近き発電所かな

オーボエの音色悲しき春の雨被爆報じる紙面を濡らす

狼の影に怖れて畜群は滅びの崖へと突き進むのか

気まぐれな日射しを受けて桜木は宴の準備整えており

抱かれても明日に別れる二人なら忘我の果てに露と消えたい

わが胸の鼓動を確かめるために汝が手が欲しい一夜だけでも

ポケットの中で絡まる君の指このまま連れて家で飼いたい

別れ際汝が手に残す爪痕は楔形文字の恋文となり

小刻みに震えていたのは朝待たず別れた吾と朝待つ小鳥

アーモンドチョコ噛み砕き思い出す別れの駅のほろ苦き時



鶯や空の光と消えにけり

接木せし刃の痕やわが懺悔