『フードトラップ』(マイケル・モス著、日経BP社)を読む。
コーラやハンバーガーがなぜ止められず食べ続けられているのか、本書はそうした”依存性”のある食品に食品会社が仕込んだ「糖分」「脂肪」「塩分」の罠について、膨大な資料に基づいて解説してくれます。「糖分」の章では、コーラやシリアル、「脂肪分」の章では、チーズとその加工食品、挽肉、「塩分」の章ではポテトチップス、スナック菓子、スープに添加される塩分などが取り上げられ、ヒトの味覚をうまく利用して、いかにおいしくそして病みつきになるように食品会社が苦心惨憺したか、その結果食生活や健康にどのような影響がでたかが書かれています。この記事を読むと、かつてアメリカでタバコ会社が(タバコは健康に明らかに悪いといわれつつあったのにもかかわらず)健康に悪くはないとしきりにキャンペーンを張って販売し、国内で旗色が悪くなると海外に輸出して販売していったという構図が、こうした食品の販売戦略にも透けて見えることです。エピローグで著者が「消費者のことを親身に気に掛けるのは、こうした企業の本質ではない」と断言しているように、「おいしいから」、「健康によさそうだから」ということでついつい手を出して食べ物の中に仕掛けられたトラップにはまらないように注意が必要でしょう。消費者としてはなるべく加工済みの食品ではなく素材から料理し、調理には砂糖、油、塩を極力控えるということで防衛するしかなさそうです。まさに食品企業と消費者の攻防戦といった観があります。
それにしても栄養過多で嗜癖性の強い食品を販売する一方で、肥満のための食品を販売するという商売や、過度な肥満のために(本来消化吸収のために必要な)胃を切除してまで治療をするという医療というものを見ると、いくら食品化学や医療技術の進歩といわれても素直に喜べないとろです。
ヒトがついこうした罠にはまってしまう仕組みについては『美味しさの脳科学』(インターシフト刊)がとても参考になります。

フードトラップ 食品に仕掛けられた至福の罠

フードトラップ 食品に仕掛けられた至福の罠