『夫婦格差社会』(橘木俊詔書、迫田さやか著、中公新書)を読む。
『日本の経済格差』、『女女格差』の著者が、格差社会化しつつある日本で、個人の所得ではなく家計の所得に注目すべき、特に世帯の妻がどれくらい稼ぐのかに注目すべきであることを様々なデータを元に論じている本。一昔前の日本であれば世帯の稼ぎ頭は夫であり、妻が共働きをしていたにしてもその収入は無視できるほどであったが、近年女性が社会進出することにより高所得の妻の存在が無視できなくなり、その結果、低所得の夫と働かない妻の「ウィークカップル」と高所得の夫婦の「パワーカップル」の格差が大きくなっていることを指摘している。こうしたカップルの差が生まれる背景には学歴の差があり、高学歴の女性は自分より高学歴の男性と結婚する同類婚の傾向があり、職業においてもその傾向がある。そのため日本では医師夫婦、弁護士夫婦、管理職夫婦という「パワーカップル」があり、一方では男性が低所得である場合、結婚すらできない状態があることを示している。従来あった職場結婚という形態も非正規労働者が増え社縁意識が衰退した現在では成立しにくくなっているという。著者は若者対策として、最低賃金のアップ、同一労働であれば正規・非正規の格差をなくすようにすること、非正規から正規労働者への機会を作ること、ワークシェアリングの導入、在学中から職業・技能訓練をすることを提唱している。若者が結婚しにくい状況にあるのに対して、離婚は増えつつある。わが国では低学歴の人ほど離婚確率が高いということを示しているが、これは高学歴の人は離婚によるデメリットを大きく感じて離婚を避けるためか、低学歴の人は経済力が低く、お金のことでトラブルを起こし離婚する確率が高まるかであろうと考察している。突然の失業などが起こりやすい現在の状況は離婚も起こりやすくなっているのだろう。離婚による貧困を避けるため、きちんと養育費などの取り決めを行わせるようにすること、母子世帯の収入保障をすることを提唱している。女性としては専門的知識を身につけて経済力をつけ、自ら自立して生活していけるだけの経済基盤を整えておくことがなにより必要ということだ。そうなると自分より弱い男性とは結婚はしたくないだろうから独身の男性が増えるのではないかと懸念されるが。

夫婦格差社会 - 二極化する結婚のかたち (中公新書)

夫婦格差社会 - 二極化する結婚のかたち (中公新書)