『寡黙な死骸 みだらな弔い』(小川洋子 中公文庫)を読む。
さまざまなかたちの死をテーマにした連作短編集。各短篇は独立した物語でありながら他の短篇とところどころで関連性をもっており、誰かの死はどこかで自分とつながっているという思いを抱かせる。物語では、冷蔵庫の中で男の子が死に、有能な院長秘書が肝臓癌で死に、両手を切断された男が死に、不倫をした医師が刺殺され、心臓が生まれつき外に飛び出している歌手が殺され、ギブス販売人が窒息死し、書けなくなった小説家が死に、イルカにベンガル虎、ハムスターが死んでいく。残酷でありながらもどこか甘美な死のかたちを名うての小説家が死者たちに代わって死を語ってくれる。
わたしとかかわったことのある死者に思いを馳せるお盆の時季に読むのにふさわしい一冊だった。

寡黙な死骸 みだらな弔い (中公文庫)

寡黙な死骸 みだらな弔い (中公文庫)