『数学でわかるオリンピック100の謎』(ジョン・D・バロウ著、青土社)を読む。
今日NHKスペシャルミラクルボディー 第1回「ウサイン・ボルト 人類最速の秘密」が放映されていたが、本書の最初の話題が、「ウサイン・ボルトはどうすればこれ以上速く走らなくても世界記録を更新できるか」である。著者は『数学でわかる100のこと』の著者(この著書と一部同じ話題が掲載されている)。ここではスタートの時間と追い風の二つがポイントとなると論じている。数学や物理の視点からスポーツの実技やルールについての考察をする知的な刺激に満ちた本だ。さまざまな話題が取り上げられているが、主題の一つはある競技を物理学的に考察すること。ボート競技や車いすレースでタイムを規定するのはどのような要因か? ウィンドサーフィンにはどれくらいの力が必要か? 炎天下でのマラソンでは身長の高さはどう影響するか? 選手の体重や速度などの物理的諸条件の関係を考察していくことで、解答を導き出す過程が面白く、こうした思考はスポーツに限らず日常生活で遭遇する課題解決でも役に立つだろう。もう一つは、スポーツのルールについて数学的に考察することである。リーグ選でどのような勝ち点計算方法にすればよりチームの実力を正当に評価できるか?十種競技トライアスロンでは各種目における得点や競技の配分をどうすればより合理的か?卓球などで接戦を行わせかつ実力が反映されるようにするにはどういうルールにすればいいか?などが取り上げられる。
オリンピックにまつわるさまざまな蘊蓄も鏤められており、本書を読むと、まもなく開催されるロンドンオリンピックの観戦がよりエキサイティングになるだろう。