『謎の物語』(紀田順一郎編、ちくま文庫)を読む。
短篇小説の醍醐味は結末の意外性や斬新さに依るところが大なのだが、最後が読者の想像に任されたり、謎が解かれず終いだったりするいわゆる「謎物語(リドル・ストーリー)を集めた一冊。この形式はこの本にも収められている『女か虎か』の作者であるフランク・リチャード・ストックトン(1834-1902)によるところが大きいと解説にあるが、この一編はいわば究極の選択を課せられた主人公がどうなったかを読者に想像させる物語である。女性の視点と男性の視点のいずれからみるかで興趣も大きく違うだろうということもあり、話題性は満点だろう。その続編『三日月刀の督励官』も収められている。その物語からさらに別の作者が話をつくった『女と虎と』もまた面白い。収められている短篇で、事の真相はどうだったのかと気になるのは『ヒギンボタム氏の災難』(N.ホーソーン)、短いながら切れのあるのは『茶わんのなか』(小泉八雲)。日本での謎物語の筆頭は芥川の『藪の中』だろう。是非日本篇も編んでほしい。

謎の物語 (ちくま文庫)

謎の物語 (ちくま文庫)