『知識と経験の革命』(ピーター・ディア著、みすず書房)を読む。
17世紀に起きた科学革命はどのようなものであったかを16世紀の科学と対比させながら解説する本。巻末の解説によれば、本書は、アメリ科学史学会が英語で出版された一般読者向けの科学史を対象とした本に授与されるWatson Davis and Hlen Miles Davis Prizeを2002年に受賞している。17世紀に起きた科学革命が革命たるゆえんは、自然現象を”理解”する思弁から自然を利用する”有用性”が重視されるようになった知識に対する態度の変化が大きいとしている。これは当然ヨーロッパが世界に向けて出て行く当時の歴史的状況も影響している。興味深かったのは、第6章「正規教育外の活動」で、当時大学以外の場で王侯たちがパトロンとなり科学者のこうした活動を支援した経緯を解説した章だった。最先端の科学を誰がどう支援するかということを考える上で、現代にも通じるところがある。その動向により以後の科学がどう展開するか左右されるという歴史を学ぶと巨大科学にどう投資するかというのは他人事ではない。大学外での現場重視の実験が重要であった点は、同社から出版されている『十六世紀文化革命』(山本義隆著)でも強調されていたように記憶する。

知識と経験の革命―― 科学革命の現場で何が起こったか

知識と経験の革命―― 科学革命の現場で何が起こったか