フラクタルの物理(I)基礎編』(松下貢著 裳華房)を読む。
『枝分かれ 自然が創り出す美しいパターン』(早川書房)を読んだとき、フラクタルに関することをもう少し詳しく知りたかったときに、出会った本。著者が大学学部や大学院で講義する際のノートをまとめたものがもとになっていると冒頭で述べてある。基礎編だけにていねいに自然の中の自己相似性、フラクタル次元とその求め方、ランダムに成長するパターンのモデル(バリスティックモデル、侵入型パーコレーションモデル)について解説してある。コラムにはフラクタルの生みの親であるマンデルブロのエピソード(語学の天才だったことや非常に攻撃的な性格であったことなど)が紹介されている。著者は彼とも親交がありバクテリアコロニーの研究を高く評価してくれたということだ。ランダムウォークを解説する導入部のところで、アインシュタインは、自らのブラウン運動の理論の中で粒子の軌跡が自己相似フラクタルで、そのフラクタル次元Dが空間の次元dに関係なくD=2であることを示していたということが紹介され、付録にはその理論の解説が掲載してあったりなど幅の広がりをもった非常にいい解説書だと思う。

フラクタルの物理〈1〉基礎編 (裳華房フィジックスライブラリー)

フラクタルの物理〈1〉基礎編 (裳華房フィジックスライブラリー)