『スーパーセンス』(ブルース・M・フード著、インターシフト)を読む。
副題は「ヒトは生まれつき超科学的な心を持っている」とあるので、あやしげなトンデモ本と誤解される向きもあるかもしれないが、まっとうなポピュラーサイエンス本であり、本書は人間がもっている本質主義的傾向を発達心理学的観点から解説したものである。冒頭に著者が持ち出す例が、「殺人鬼が着たカーディガンを着ることができるか」という問いである。たいていの人は、これを拒む。別にカーディガンに特別なものが”宿っている”わけではないけれど、私たちは何かがあると”直感”してしまう。同様に自殺者が出たという家には住みたがらないし、有名人が着た服は高額で落札される。別に物体としてはなんら差異はないのに、何か特別なものがその物体には存在していると感じる。これが著者のいう本質主義的思考であり、私たちが身につけてしまう二元論的傾向である。この傾向は、しかしながら、都合の悪いことばかりではなく、この性質のために外観だけからはわからない隠れた本質を推論探索することで科学も発達した。科学と疑似科学の境界がなかなか明確でないことには、このあたりにも原因があるのかもしれない。著者のいうスーパーセンス(直観的に隠れた本質をとらえる能力)は、人に金では買えない価値があるという信念を生み出す源泉であり、価値観を同じくする人たちの結束力を高めることに役立ってきたと同時に、極端になれば排他的狂信的な感情の原因ともなる。この感覚とどう折り合いをつけていくのかが多様な価値観とすぐ隣り合わせになる現代のグローバルな状況で問われている。

スーパーセンスーーヒトは生まれつき超科学的な心を持っている

スーパーセンスーーヒトは生まれつき超科学的な心を持っている