『絶滅危急季語辞典』(夏井いつき著、ちくま文庫)を読む。
『絶滅寸前季語辞典』に続く第二弾。一見しただけではどの季にあたるかはもちろん、どういうものを指示しているのかもよくわからないような季語が並べられ、これでもかと奮闘して作句する著者たちの涙ぐましくも笑える姿を今回も十分堪能することができる。春の季語は、「石牡丹」で始まるのだが、これを私は葉牡丹の親戚かと思っていたし、春の最後の季語「料蛸」も著者と同じようなものではないかと思った次第。この節の著者の句会のやりとりは爆笑してしまった。志向する対象がまったく違っていても俳句という交流が成り立ってしまうというエピソードが実に愉快だったから。そして頁をめくり夏に入ると、最初は「鮎もどき」。鮎は分かるがそれに似た魚だろうとまでは分かるが、著者と同じく見たことがない。解説には国内希少野生動物種に指定されとあるから、季語だけでなく本体も絶滅危急である。それにしてもこれらの言葉が季語として句を詠むコミュニティで成り立っていたということはその時期に一定数の句が見られるはずだ。今度は是非年表形式にして句数を調査し、その栄枯盛衰を時間軸で見せてほしいものである。

絶滅危急季語辞典 (ちくま文庫)

絶滅危急季語辞典 (ちくま文庫)