『戦前日本の「グローバリズム」』(井上寿一著、新潮選書)を読む。
『戦前昭和の社会 1926-1945』(講談社現代新書)が面白かったことと、本書がその第二部であること(第三部は講談社選書メチエとして近刊とのこと)から手に取った本。一般の印象とは異なり、1930年代の日本は、「世界がもっとも広がった時代」だったことを明らかにしていく。世界へと広がる経済活動については、当時の日本は保護主義に反対し、中近東、南米、アフリカへと経済活動を展開していたこと、国際連盟脱退を契機に世界のさまざまな国との相互理解が進んだ面もあること、そこから南太平洋への関心も生まれたことがわかり、薄暗かったこの時代の歴史理解にぱっとランプを灯されたような思いだった。そしてドイツとの関係はどちらかというとぎくしゃくとしており、この選択のために対米関係が悪化していったことが示される。第III章は簡潔明瞭にこうまとめてある。

 日本にとって1930年代は、対英米協調から対独伊接近へ、「デモクラシー」から「ファシズム」への歴史的な転換期だった。この180度の転換は、「悪玉」の量的な拡大=「善玉」の没落の結果ではない。英米協調論者が独伊に接近する。「デモクラシー」の擁護が「ファシズム」の受容につながる。(中略)
 日本も同様だった。二大政党による政党内閣崩壊後の新しい政党政治の模索は、世界に共通する国家主義体制の確立をめざすようになった。日本の「ファシズム」国家化をもたらしたのは、1930年代における〈昭和デモクラシー〉の発展だった。

現在日本はさまざまな課題に直面しているが、日本がかつて歴史の重大な岐路にたったこの時代の情勢をもう一度謙虚に見つめる必要があるように思う。そしてどんな状況にあっても国際社会の中で日本は生きていることを忘れないことが必要だろう。

戦前日本の「グローバリズム」 一九三〇年代の教訓 (新潮選書)

戦前日本の「グローバリズム」 一九三〇年代の教訓 (新潮選書)