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突き抜けた悲しみに似た抱き合った後のからだの震えとは何
君の目を想い出そうと早朝に少し苦めの紅茶を入れる
蠍座の這う空ををみる朝帰り毒を含んだ女となるや
君を刺す毒あらばいつ使う夜明けの街を彷徨い思う
春という恋を生み出す怪物が闇夜の底にひっそり眠る
赤い眼の恋を貪る怪物を飼育始めた如月の末
- 作者: 山本史郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/02/10
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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歌と同じように小説も世に連れてその受容のされ方も違ってくる。本書では誰でも題名は知っている英文学上の”名作”を取り上げ、今の私たちには分からなくなった側面に光を当てる。第一部で面白かったのは『ロビンソン・クルーソー』の作者デフォーが実に細かいところまで書き込む作家であったことがスウィフトと対比させながら解説した章と『赤毛のアン』に翻訳では隠されてしまった物語があったということを教えてくれる章。この第4章では翻訳ということについて考えさせられる。
第二部での『マクベス』の時代による変奏はテーマとしてはお馴染みで、語り出すと一冊になるところを手堅くまとめている。最後の『荒涼館』とカフカの作品との相影響しあう関係も面白い。
それにしても親父ギャグをとばしながらのやや饒舌でこんなに面白い講義をこの先生はいつもされているのですね。