神道とは何か』(伊藤聡著、中公新書)を読む。
古代から近世までの神道の歴史を仏教との相互作用の中でどのように展開したかを概説した本。古代における神仏習合のいきさつから始まって、中世における神道と仏教との関係すなわち神仏習合のことを説明している。門外漢にとっては、このあたりが分かりにくいのだが、鎌倉時代の新興仏教が本地垂迹的習合思想をどう受容するかがその後の発展に重要であったことが分かる。この受容という妥協が日本的な対応だったのだろうか、それにより新仏教の体制批判の要素が弱まったというのが著者の評価である。第三章の「新しき神々」では、人神信仰と御霊信仰が扱われており、日本思想を理解する上でここはどうしても外せないところである。続く第四章では「国土観と神話」として「神国」の淵源から展開を概観する。第五章では近世における神道が扱われるが、仏教に対する評価において中世と近世には断絶があると著者は見ている。仏教の脱俗的性格が世俗社会の社会関係を重視する近世において批判の対象となり、その批判者が還俗僧上がりの儒者だったという。日本固有の拠り所として神道が形成されていくのだが、この歴史をみるとその中核にある固有のものとは仮構されたものであることが分かるのである。それにしてもさすが新書の老舗である中公新書らしい重厚な一冊であった。安普請の選書は見習うべきであろう。

神道とは何か - 神と仏の日本史 (中公新書)

神道とは何か - 神と仏の日本史 (中公新書)